本人にあえて言う必要がないこと
「初めて言われました」「えっ、そんなこと言われたことありません」
――と、コンサルティングのやりとりのなかでお客様から出てくることがあります。
これは褒め言葉に対しても、ネガティブな言葉に対してもある反応ですが、改めて考えてほしいのは後者の場合です。
「人はあえて、悪いことを本人に言うと思いますか???」
―――もちろん、言うわけがありません。「言われたことがない」のは当たり前です。
ここで改めて言っておきたいのは、「立場が上になるほど、年齢が上がるほど、悪いことは耳に入りにくくなりますよ」ということです。
とくにご自身に対する客観的な見え方は、そうそう言ってくれるものではありません。
過去にあった具体的な例を出してみると、このようなネガティブワードです。
「見た目がコワそう」
「頼りなさそう」
「アヤシイ雰囲気」
「軽そう・チャラそう」etc……
これらを素直にそのままご本人に伝えるのは、やはり、相当勇気がいることですし、あえて本人に言う必要はないと思うのが普通の感覚でしょう。
ですが、私は仕事柄、このあたりのこともちゃんとお伝えしなければいけない役割です。もちろん、言葉を選んで(笑)、納得してもらえるように。
希望的観測の「思っていない」でないか?
例にも出しましたが、「あやしい」という印象は、ビジネスシーンでは相手に抱かせてはいけないキーワードの一つです。
ご自身でも言われては困る、抱かれてはNGワードとして、この「あやしい」を出していたのがAさん。
ところが、周りからの声をリサーチしてみると、Aさんの印象というと、真っ先にこの「あやしい」という言葉が出てくるのです。
言われてはNGだと思う印象と、実際の自分の印象がこの「あやしい」で一致してしまうのです。これは大きな問題です。
「言われたことない」と言いますが……これは当然、本人には言いません。
繰り返しになりますが、相手が気分を損ねるようなネガティブなことを、あえて本人に言う人はいないのです。
「言われたことがない」とは、相手は本当に「思っていないのか」、もしくは思ってはいるけれど「言わないだけなのか」。当事者は希望的観測で「思っていない」と信じたいでしょうが、「言わないだけ」のケースが多いのが正直なところです。
Aさんの話に戻ります。「あやしい」印象を払拭するような外見にイメージチェンジをしたところ、仲間内から出た声が、多くの人の声を代弁しているようでした。
「あ~、これならば、紹介できます!」。
このひと言にいろいろな意味が込められていると、苦笑いしながら実感した様子のAさんでした。