■話しを聞いて、聞いた社員がどうなってほしいのか?
「自分の言いたいことだけで、終わっていませんかーー?」
と、今一度、問いかけたいのは、この時期に最も重要な新年度の挨拶についてです。
4月になると、普段にも増して人前で話しをする機会が増えます。この時期に入社する新卒・既卒を問わない新入社員への言葉には、とくに気を付けなければいけません。
なぜならば、社長にとっては毎年4月にする恒例の挨拶だとしても、聞く側である社員にとっては、入社時に聞く社長の言葉は、「一生に一回」のものであるからです。
社長が仕事へかける意気込み、自社への思い入れを語ることは、もちろん悪いことではありません。ですが、それで終わっていませんかーーー???
自分の話しを聞いて、聞いた社員がどうなってほしいか?
そこまで考えて話しをしているでしょうか?
話しをする側と聞く側で、同じ意識と思いをもって、その場にいるのが理想ではあります。とはいえ、実際は、話し手の言いたいことを言う場になってしまっていて、話しを聞いた社員が、その後、どう変わってほしいのか?どんな行動をしてほしいのか? そこまで考えてはおらず、言いたいことを言いっぱなしで終わっている方が少なくありません。
■言葉をきっかけにどう行動をしてほしいかを見据えること
企業のトップであるならば、全社員がモチベーションを上げてほしいのは当たり前でしょう。では、そのためには、ご自身の話や言った言葉をきっかけとして、社員が実際にどのような行動につながるように期待したいのか、そこまで見据えているでしょうか。
新年度の社長の挨拶を聞いて、聞いた人が何か一つでも変えたことがあれば、これは大変な影響力といえます。大変なことですが、これは社長の新年度の挨拶の内容次第で、実現可能なことともいえます。
わかりやすい例でいうと、「15分早く出社する」。それによって、作業効率の良い朝を有効活用できる。「事務処理が集中できない」という人は、電話やメールを一切やらない時間を設ける。「運動不足でメタボ気味」という人は、通勤は一つ前の駅からウォーキングなど、実行可能なことはいろいろとあり、これらは実際に行動に移した例です。
ここで気を付けないのは、「社長が言ったから」やるのではなく、あくまでもきっかけづくりとなる話しをすることです。「15分早くきなさい」「ひと駅分歩きなさい」ではなく、「自分もやってみよう!」「それはいいかも!」と思わせることで、自らの行動につなげることが重要なのです。
仕事柄、企業トップの方の挨拶やスピーチを聞く機会をよくあります。スピーチスキルという観点から見ると、問題ばかりなのだけど、なぜか印象に残る方。その逆に、滞りなくスラスラ話してはいたけれど、後で何を言ったか思い出せないという方と、いろいろなタイプの方がいます。
結論から言うと、話し方が上手くても残らない話では意味がありません。How toの追求は、違う軸ではかることであって、人を動かすのは、やはり内容ありき、なのです。
とにかく“話して終わり”では、新年度の挨拶の場はもったいないーー。 話しを聞いて、いかにどう変わってほしいか。その思いを託した言葉を届けるよう社長自身の意識改革も必要です。
話しを聞いた後に、社員にどうなってほしいのか、どんな行動につなげてほしいのか、今一度考えて、モチベーションアップに最適な年に一度のこの機会です。新入社員への一生に一度、さらに、全社員へは「平成最後の」チャンスがあります。生涯またとないチャンスともいえます。ぜひ、有効に使ってみてください。
この記事の執筆者
山川碧子(やまかわ みどり)
株式会社プライムイメージ代表/AICI国際イメージコンサルタント。2006年からビジネスパーソンの印象管理・印象マネジメント®を中心にサポートしています。著書『4分5秒で話は決まる~ビジネス成功のための印象戦略』。お仕事のご依頼はこちらからお願いします。