■取り残されないためバージョンアップをする毎日を経て
「―――と、まったく変わらないわけですよ。」
と、熱く話すのは広告関連会社のS社長。何が変わらないのかといえば、ひと言でいうと、「ものごとの根幹の部分」という意味でしょうか。これは業績に連動して、迷いや落ち込みを経験した末に、最近、行きついた答えだといいます。
どの業界にいても、最先端技術やITの進歩がめざましい昨今。「取り残されないように」という思いをどこかに抱えながら、多くの人が、日々、バージョンアップをしようとしている、そんな感じを受けます。
今年で独立20年を迎える、経験豊富なこのS社長でさえ、次から次へと出てくる業界の新たな手法ややり方には、どこか「ついていけない」という思いを抱いていたとか。「自分の時代は終わったな」という思いと、「世代交代」という言葉が頭に浮かぶこともしばしばだったと言います。
最新の技術と手法、それについていかねば、ついていかねば、と自分を追い込んでいたのが、その頃のS社長。そんなときに、取引のあるIT関連の30代の社長から、「〇〇について、クライアント企業に向けて話しをしてほしい」という依頼がありました。
関係があるといえばあるけれど、今までやったことがない分野。最先端の知識が豊富とはいえない依頼内容に、当初は二の足を踏んだそうです。ところが、よくよく話しを聞いてみると、その「話してほしい」内容は、突き詰めていくとネーミングは違ってはいますが、業界に入ってからずっと何年もご自身がやってきたことが全てベースになっていたのです。
「枝葉ばかりが目についていたけど、求められているのは幹の部分だった」。それに気付いたら、「なんだ~、これでよかったんじゃん」と思ったーーと、満面の笑みで言うS社長がいろいろな意味で印象的でした。
■変えるもの、変えざるものを見極めができる
リンダ・グラットンのベストセラー本『ライフシフト』の影響もあり、「人生100年」という言葉をよく聞くようになりました。会社員であれば、「あと何年で退職」という現役とその後の線引きがしやすいのかもしれません。その一方で、経営者側である場合、生涯現役でいることも可能ではありますが、事業継続のためには、現状維持では何も進まないことは実感されているはずです。
外部環境の変化に加え、ご自身の経験値だけで進むことは、ある意味、危険を伴いますが、この経験値をなくしては前進できない。当たり前といえば当たり前ですが、迷い、落ち込んでいるときには、この重要性は自分で認識できないのかもしれません。
変わらなければいけないもの。変わらないほうがよいもの。何事も新しければ良いわけではありません。重要なのは、変えるもの、変えざるもの、その見極めができること。経営者としても、人間としても、それができる人がうまく年齢を重ねているといえるのかもしれません。
さて、ご自身はできているでしょうかーー?
この記事の執筆者
山川碧子(やまかわ みどり)
株式会社プライムイメージ代表/AICI国際イメージコンサルタント。2006年からビジネスパーソンの印象管理・印象マネジメント®を中心にサポートしています。著書『4分5秒で話は決まる~ビジネス成功のための印象戦略』。お仕事のご依頼はこちらからお願いします。