戦術、適材適所、役割を全うすること
アジア初となるラグビーW杯日本大会も開幕しました。初日の時点で、チケットは95%が売れており、全試合満席になる勢いだといいます。
ラグビーは、その戦術がビジネスでの組織論、リーダーシップ論にも通じるものがあると、よく耳にします。ですが、競技やルールに詳しくない身としては、理解しきれないことも多くありましたが、W杯開幕を前に人気を博したテレビドラマ『ノーサイド・ゲーム』(池井戸潤原作)が、ルールを知るよいきっかけ作りになってくれました。
2020年東京オリンピックの前年にW杯の開催、ファンの裾野を広げるためのさまざまな活動をしていくなかで、人気作家原作の日曜ドラマの人気で一般的な認知度を高めて、盛り上げ、W杯開催に突入――という計算されたマーケティングです。
ドラマの内容も、日本のメーカーを舞台にした企業内人事から、実業団としてのスポーツの在り方、社会貢献、個々の能力と役割などが描かれていましたが、ラグビーという競技自体も詳しくない者が、ルールを理解しながら楽しむことができるレベルの解説をしてくれていました。
練られた戦術によって、適材適所の配置、各人が役割を全うすることで、勝利(成功)をつかむ。まさにビジネスの現場でやるべきことそのものであり、そこに組織論、リーダーシップ論で語られることが凝縮されているようです。周りの方々から聞こえてくるラグビー人材への高評価の理由がはっきりわかった気がします。
多様性に必要なのは気持ち的な歩み寄り
それに加えて、日本代表として出場する選手の多様性も、今の時代の象徴的な流れと重なってもいます。
W杯が日本開催となって初めて知りましたが、ラグビーの代表資格は、他の競技と違い国籍は必要なし。「その国・地域生まれ」「両親・祖父母の1人がその国・地域生まれ」「3年以上継続してその国・地域に居住」といった要件を満たせば、得られるということです。
ベスト8進出を目指す、今回の日本代表は31人の選手のうち、15人が外国出身選手。主将のリーチ・マイケル選手は、ニュージーランド出身。高校時代に奨学金で日本の高校に交換留学生として来日し、その後、大学進学した20歳のときに日本代表入りをしました。
ラグビー強豪の出身国NZでなく、母親の出身地のフィジーでなく、日本代表を選んだ理由をこうコメントしています。「僕は日本で成長できたから。」
半数を占める外国出身選手は、「君が代」の練習をしたり、日本の文化や歴史を理解することで、日本代表としての結束力を高めているといいます。
こうした日本との距離を縮めようとする外国出身選手の話を聞くと、彼らは日本代表であるから当たり前、外国から日本に来たのだから当たり前――と考える日本人も少なくないでしょう。でも、受け入れ国として、こうした気持ちや行いを、当たり前と感じること、特別なことと思えない感覚でよいのでしょうか?
昨今、外国人労働者の受け入れ側企業の問題が取りざたされています。給与や環境整備ももちろんですが、距離を縮めようとする外国出身の人たちへ、気持ち的な歩み寄りが私たち日本人は少なすぎるのかもしれない、と思わずにはいられません。
多様性を認める、認めなければならない状況である今の日本。ラグビーだけでなく、開催国・日本に必要なのは、「多様性」のある人材を「適材適所」に配置すること、「適材適所」にそれぞれ「多様性」のある人材がいること。これが好循環を生むキーワードあることを教えてくれたといえるでしょう。
この記事の執筆者
山川碧子(やまかわ みどり)
株式会社プライムイメージ代表/AICI国際イメージコンサルタント。2006年からビジネスパーソンの印象管理・印象マネジメント®を中心にサポートしています。著書『4分5秒で話は決まる~ビジネス成功のための印象戦略』。お仕事のご依頼はこちらからお願いします。