過去の発言をさかのぼって一貫性があるかどうか?
「話をするとき、発言の一貫性があるかーー?」
普段から、話しをしていると、その人が使っている言葉から、ある程度の志向(嗜好)が見えてくることが多くあります。
それがオフィシャルな場で、人前で話しをする立場であれば、「発言の一貫性」は重要視しなければいけないことです。
一つひとつの言葉が集まって発言となるわけですが、今の時代、過去の発言をさかのぼって、それに一貫性があるかどうかをAIを使うことで確認することができます。
いい加減さやあやふやさを「うまい言い方」で煙に巻いてしまうーーーそんなことは現在はできなくなってしまい、言葉で発信した時点で想像以上に深い分析にさらされてしまうのが、今の時代の話し手の立場なのです。
これを詳しく目にしたのは、『Forbes JAPAN』(2022年3月号)の「発言一貫度ランキング」という記事でした。
これは直近5年間のCEOが発信したメッセージの「ポジティブな一貫度」を、AIによる自然言語処理モデルで分析と評価した、というもの。経営理念から実行度までポジティブでブレがないかをスコア化してランキングにしています。
【発言一貫度ランキング】上位Top5はこちらになります。
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1位 ユニ・チャーム 代表取締役社長執行役員 高原豪久氏
2位 セコム 代表取締役 尾関一郎氏
3位 凸版印刷 代表取締役 麿秀春氏
4位 東海旅客鉄道 代表取締役社長 金子慎氏
5位 SMC 代表取締役 社長執行役員 高田芳樹氏
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あえて抽象度の高い言葉を使う理由
時代の変化とともに、その発言する場所がリアルの場であっても、オンラインを通じた場であっても、言っている言葉そのものは変わりません。
当然ながら、その発言にブレがないかどうかは、その人への信用、ひいてはその企業の信頼性にもつながります。
この分析は、今の時流に合ったパワーワード(例:環境、女性登用など)を盛り込んだだけでは、ハイスコアは出ないように配慮されているといいます。
それに加えて、単純に「同じ言葉、わかりやすい言葉を何度も言う」ことを良しとするのか?というと、それは違います。
上位にランキングされたトップの言葉を分析すると、一般的にはあいまいだと言われる「抽象的度」の高い言葉が多いという結果が出ています(例:サステナビリティ、シナジー、競争など)。
最も多かったのが「社会課題」。頻出ワードのTOP10は、「成長」「価値」「環境」「実現」「世界」「社員」「地域」「日本」「長期」「コロナ」。ここでは単純に言葉だけではわかりにくいので、この使い方も確認することが必要ですね。
こうした分析をしたうえで、1位のユニ・チャーム・高原社長の言葉が大変奥深いものでした。
抽象的な言葉をあえて使うのは、その先の行動につなげてもらうため。
抽象的な言葉を使いながらも、「何度も言い続ける」こと。
社員に言い続けられるコミュニケーション力をもっているかがトップとして重要なのだと、結論づけていました。
「何度も言い続ける」「言い続ける」「コミュニケーションを続ける」――トップの印象マネジメントの視点でも、改めて重視していきたい視点です。