見えてきた限界とできること、できないこと
「オンラインになってラクになりましたよねーー」と、確かに最初は言っていました。
オンラインが日常化して1年が経ち、最近では「ラク」とは言い切れないことが多いのでは? かえってオンラインのほうが時間がかかるかも?と思うことが多々あります。
確かに場所の移動をしなくても済むし、その分、交通費もかかりません。ですが、仕事は移動時間とコストだけでは片付けられないことも多くあります。
例えば、オンラインセミナーを主催した場合。
最近では、主催側も受講者側もオンラインでできる限界が見えてきています。要するに、オンラインでできることと、どうがんばっても無理があること。そして、オンラインだから、コストが下がるとは言い切れず、テクニカルな担当をつけると、逆にリアルよりも高コストになるという話しはよく耳にします。
私の仕事で言うのであれば、正直なところ、オンラインのほうが時間がかかると思っています。
単にコンテンツを提供するだけであれば、アーカイブ形式にして好きな時間に見られるようにする、ということも可能です。
ですが、現場の声を聞くと、「好きな時間に見てください」とすると、時間の自由度が増す分、実際には見る機会を逃してしまう人が多いといいます。
そのため、一同に会する場が必要となるわけですが、そうなるとリアルでの対面セミナーよりも、実際は大変なことが多くなる、というのが実際に経験した人ならば実感できることでしょう。
私の場合は、限られた人数の絞られた方々へのオンラインセミナーがメインとなります。リアルでなくオンラインになったことでの一番の変化は、この参加者の方とのオンラインを通した1:1のやりとりというワンステップが増えたことです。
セミナーを受けることで、相応の変化が求められるわけですから、当然ながらリアルでもオンラインでも準備が重要になります。ですが、その準備の質が違っているため、「オンラインはラク」とは言い切れないことが多々あるわけです。
実際に顔を合わせないコミュニケーションで、相手の方に満足してもらうのは、やはり大変なことですよね。
オンラインで自分の首をシメる!?
昨今のオンライン事情の話をしていると、あるセラピストの方の言葉が印象的でした。
「手軽にオンラインをやり始めた人は、自分の首をシメているのではないかーー?」
というのは、オンラインで満足感を与えるのは、とても大変なこと。それを踏まえて、オンラインで相応のものを提供したとすれば、リアルのセッションはそれよりも数段高いレベルなものを求められるはず、だと。
「さて、その期待に応えられる力量をお持ちなのかーー???」と。
また、オンライン化が一気に進んだ頃、海外の大学留学に行かなくても、日本にいながら授業が受けられるようになる、とポジティブなニュアンスで言われていました。
実際に現地の異文化に触れることがなくても、コスト的にも、時間的にもメリットが大きく、海外留学への考え方が変わっていくのか、と思っていましたが、今のところ、そうした流れにはなっていないようです。
アメリカの大学に娘を行かせていた友人夫妻は、オンラインだけの授業が続くことを考えて、一旦、休学をさせてそう。やはり、「オンラインでの限界」が目に見えてわかった様子です。
オンラインで距離の差は埋められても、時差はあるし、どうしても双方向にはなりきれない、そんなスタイルの限界が見えたようです。当然ながら、効率化だけでは片づけられないのが教育なのですね。
便利ではあるけれど、「ラク」になったわけでないのが、やってみてわかったオンラインの現実。1年やってみた今の感想が、また今後1年でどう様変わりしていくのか?この大きな変化の時代、興味深いところです。